生前贈与と相続対策
生前贈与と相続対策
何人も自己の財産を自由に処分できるのが原則です。相続財産の処分には通常二つの方法があります。一つは遺言により遺贈する方法で、もう一つは生前贈与しておく方法です。遺言することに抵抗を感じる人、あるいは相続開始後の相続人間のトラブルを回避したいという場合には生前贈与しておくことは有効な手立てです。また、税金対策の面からも検討しておくべきでしょう。
単純贈与と生前贈与の比較
贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受託することによって成立する契約です。
・定期贈与定期の給付を目的とする贈与
(例)「毎年100万円ずつ20年間贈与する」など
・負担付贈与財産の贈与を受けた者に一定の給付をなすべき義務を負わせる贈与
(例)「土地を贈与するにあたり、借入金の一部を負担させる」など
・死因贈与財産を贈与する者が死亡して効力が発生する贈与(相続税の課税対象)
(例)「私が死んだらこの土地をあげる」など
・通常の贈与
上記以外の贈与(契約後速やかに引渡しが行われる)
などがあります。
単純贈与と生前贈与比較表を示します。
生前贈与の使い方を示します。
※生前贈与に関し、親から受けた贈与に対する課税を、親が死去して相続が開始するまで、繰り延べできる「相続時精算課税制度」と呼ばれる制度があります。
これは生前に贈与を受けた財産の税金を相続時に精算して払うので、相続時精算課税と言うわけです。繰り延べした間に、その財産の価値(株式、不動産等)が上がれば、その値上がり分には相続税はかかりませんので、その分得するという考え方も成立します。(逆に財産の価値が下がれば、その分損する場合もあります。)
一度、相続時精算課税を選択すると、選択した年以降、贈与者が亡くなるまで適用されます。元の暦年課税に戻すことはできません。
単なる暦年課税制度と相続時精算課税制度との比較表は下記のとおりです。
・定期贈与定期の給付を目的とする贈与
(例)「毎年100万円ずつ20年間贈与する」など
・負担付贈与財産の贈与を受けた者に一定の給付をなすべき義務を負わせる贈与
(例)「土地を贈与するにあたり、借入金の一部を負担させる」など
・死因贈与財産を贈与する者が死亡して効力が発生する贈与(相続税の課税対象)
(例)「私が死んだらこの土地をあげる」など
・通常の贈与
上記以外の贈与(契約後速やかに引渡しが行われる)
などがあります。
単純贈与と生前贈与比較表を示します。
生前贈与の使い方を示します。
※生前贈与に関し、親から受けた贈与に対する課税を、親が死去して相続が開始するまで、繰り延べできる「相続時精算課税制度」と呼ばれる制度があります。
これは生前に贈与を受けた財産の税金を相続時に精算して払うので、相続時精算課税と言うわけです。繰り延べした間に、その財産の価値(株式、不動産等)が上がれば、その値上がり分には相続税はかかりませんので、その分得するという考え方も成立します。(逆に財産の価値が下がれば、その分損する場合もあります。)
一度、相続時精算課税を選択すると、選択した年以降、贈与者が亡くなるまで適用されます。元の暦年課税に戻すことはできません。
単なる暦年課税制度と相続時精算課税制度との比較表は下記のとおりです。
(2)贈与税の申告・納付
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産(複数からの贈与によって財産を取得している場合はその合計)を対象にして、翌年2月1日から3月15日までに申告・納付します。
贈与税の基礎控除
贈与により取得した財産の合計額から基礎控除額110万円(平成13年1月1日以降の贈与)を差し引いて課税価格を計算し、これに税率を掛けて税額を計算します。
相続税の贈与税額控除
相続開始前3年以内の贈与財産については、相続財産に加えて相続税を計算し、その代わりに、前に納めた贈与税額はその相続税額から控除されます。つまり、贈与税と相続税の二重課税を回避するために贈与税額を相続税額から差し引くことになっています。
贈与税の税率
贈与税は、相続税の補完税といわれています。もし、相続税のかかるはずの財産を生前に贈与して、そのまま相続税がかからないならば、みんな生前贈与を行うでしょう。このため、相続税逃れを防止するためにも贈与税のほうが相続税よりも税負担が高くなっています。
贈与税も相続税と同様、不労所得の典型的なものですから、税率も金額がかさむにつれて、急激に増加します。贈与税の計算は、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計します。続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。
次に、その残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。
贈与税=(贈与取得財産の課税価格-基礎控除額)×税率-控除額
暦年課税(20 歳以上の者が直系尊属から受けた贈与)の贈与税の速算表。
詳しくは、国税庁ホームページ相続税の計算と税率をご覧下さい。
贈与税も相続税と同様、不労所得の典型的なものですから、税率も金額がかさむにつれて、急激に増加します。贈与税の計算は、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計します。続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。
次に、その残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。
贈与税=(贈与取得財産の課税価格-基礎控除額)×税率-控除額
暦年課税(20 歳以上の者が直系尊属から受けた贈与)の贈与税の速算表。
詳しくは、国税庁ホームページ相続税の計算と税率をご覧下さい。
(3)生前贈与を活用した節税対策
生前贈与を活用した節税対策について記述します。
基礎控除を最大限利用
①制度上の取り扱い
1月1日から12月31日までの1年間に、もらった人1人に対して110万円以内の贈与であれば、贈与税はかかりません。たとえば、3人に毎年110万円ずつ、10年間贈与した場合、贈与税は0で、しかも、3300万円の相続財産を減らすことになり、その分相続税も軽減されます。なお一度に多額の贈与をすると重い贈与税がかかります。
また贈与を受けた人は、仮に、3人から各々110万円ずつ合計330万円の贈与を受けたとしても、基礎控除額は110万円として計算します。
注意点は、「1年間」と「もらった人1人」の2つです。
1)1月1日から12月31日までの「1年間」で考えるので、Aさんから5月6日に100万、7月8日に50万をもらったCさんは、150万をもらったことになり、Cさんは贈与税がかかります。
2)「もらった人1人」で考えるので、Aさんから100万、Bさんから50万をもらったCさんは、150万をもらったことになり、Cさんは贈与税がかかります。
3)「もらった人1人」で考えるので、Aさんが、Cさんに100万、Dさんに50万をあげた場合はCさん、Dさんが他に財産をもらっていなければ贈与税はかかりません。
・贈与税は、個人から贈与により財産を取得したもの(個人)にかかる税金です。
・法人から個人への贈与贈与税は非課税(所得税が課税される)
・個人から法人への贈与法人税が課税される
②贈与税計算例
平成26年4月1日以降
300万円を贈与された場合
(300万円-110万円)×10%(税率)=19万円
1,200万円を贈与された場合
(1,200万円-110万円)×40%(税率)-190万円(控除額)=246万円
※なお110万円ではなく120万円贈与しておくと、贈与を受けた人の申告納税額は増えますが、贈与の実績がつくられ、のちに税務署から贈与そのものを否認されません。申告納税額は、基礎控除を差し引いた10万円の税率10%ですから1万円です。
③例外
110万円を超える財産をもらったときであっても贈与税はかからないことがあります。代表的な例は次の2つです。
・夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するために金銭の贈与を受け配偶者控除を受ける場合(詳しくは、2.居住用不動産の配偶者控除を利用する)。
1月1日から12月31日までの1年間に、もらった人1人に対して110万円以内の贈与であれば、贈与税はかかりません。たとえば、3人に毎年110万円ずつ、10年間贈与した場合、贈与税は0で、しかも、3300万円の相続財産を減らすことになり、その分相続税も軽減されます。なお一度に多額の贈与をすると重い贈与税がかかります。
また贈与を受けた人は、仮に、3人から各々110万円ずつ合計330万円の贈与を受けたとしても、基礎控除額は110万円として計算します。
注意点は、「1年間」と「もらった人1人」の2つです。
1)1月1日から12月31日までの「1年間」で考えるので、Aさんから5月6日に100万、7月8日に50万をもらったCさんは、150万をもらったことになり、Cさんは贈与税がかかります。
2)「もらった人1人」で考えるので、Aさんから100万、Bさんから50万をもらったCさんは、150万をもらったことになり、Cさんは贈与税がかかります。
3)「もらった人1人」で考えるので、Aさんが、Cさんに100万、Dさんに50万をあげた場合はCさん、Dさんが他に財産をもらっていなければ贈与税はかかりません。
・贈与税は、個人から贈与により財産を取得したもの(個人)にかかる税金です。
・法人から個人への贈与贈与税は非課税(所得税が課税される)
・個人から法人への贈与法人税が課税される
②贈与税計算例
平成26年4月1日以降
300万円を贈与された場合
(300万円-110万円)×10%(税率)=19万円
1,200万円を贈与された場合
(1,200万円-110万円)×40%(税率)-190万円(控除額)=246万円
※なお110万円ではなく120万円贈与しておくと、贈与を受けた人の申告納税額は増えますが、贈与の実績がつくられ、のちに税務署から贈与そのものを否認されません。申告納税額は、基礎控除を差し引いた10万円の税率10%ですから1万円です。
③例外
110万円を超える財産をもらったときであっても贈与税はかからないことがあります。代表的な例は次の2つです。
・夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するために金銭の贈与を受け配偶者控除を受ける場合(詳しくは、2.居住用不動産の配偶者控除を利用する)。
居住用不動産の配偶者控除を利用する
①制度上の取り扱い
結婚して20年以上経過した夫婦間で居住用不動産の贈与があった場合には、贈与税の課税価格から最高2,000万円を控除できる「贈与税の配偶者控除」という特例です。
この特例を使うと、基礎控除額110万円とあわせて、合計2,110万円までの贈与は贈与税がかかりません。
ただし、この控除を受けるためには、「同一の配偶者からの贈与について、この控除を受けていないこと」、「贈与を受けた配偶者はその居住用不動産に引き続き居住する見込であること」などの条件が付せられています。
・婚姻期間20年以上の配偶者からの贈与であること。
・「居住用不動産」または、「居住用不動産を取得するための金銭」の贈与であること。
※相続前3年以内のものであって、贈与税の配偶者控除額に相当する金額は、相続税の課税価格に加算されません
②計算例
3,000万円の居住用不動産を贈与された場合
課税価格
3,000万円-2,110万円(控除額+基礎控除額)=890万円
贈与税額
890万円×40%-125万円=231万円 ※税率
③必要書類
□申告書
□受贈者の戸籍謄本(抄本)
□受贈者の戸籍の附票の写し
□居住用不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
□受贈者の住民票の写し
結婚して20年以上経過した夫婦間で居住用不動産の贈与があった場合には、贈与税の課税価格から最高2,000万円を控除できる「贈与税の配偶者控除」という特例です。
この特例を使うと、基礎控除額110万円とあわせて、合計2,110万円までの贈与は贈与税がかかりません。
ただし、この控除を受けるためには、「同一の配偶者からの贈与について、この控除を受けていないこと」、「贈与を受けた配偶者はその居住用不動産に引き続き居住する見込であること」などの条件が付せられています。
・婚姻期間20年以上の配偶者からの贈与であること。
・「居住用不動産」または、「居住用不動産を取得するための金銭」の贈与であること。
※相続前3年以内のものであって、贈与税の配偶者控除額に相当する金額は、相続税の課税価格に加算されません
②計算例
3,000万円の居住用不動産を贈与された場合
課税価格
3,000万円-2,110万円(控除額+基礎控除額)=890万円
贈与税額
890万円×40%-125万円=231万円 ※税率
③必要書類
□申告書
□受贈者の戸籍謄本(抄本)
□受贈者の戸籍の附票の写し
□居住用不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
□受贈者の住民票の写し