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知的障害者がいるときの相続手続

知的障害者がいるときの相続手続

相続人が認知症等で事理弁別能力を欠く場合であっても相続人としての権利は有しています。従って、これらの人を除外した遺産分割協議は無効となります。またそのような相続人が、参加した遺産分割協議は無効になります。
このような場合、成年後見制度を利用する必要があります。

(1)相続手続きの流れ

①意思能力が失われている相続人に法定後見人をつけるために、家庭裁判所で「後見開始の審判」手続きを行い、審判を経て、後見人(成年後見人)を選任してもらいます。
申立人は、本人(本人の手続代理人)・配偶者・四親等内の親族、検察官等、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長です。
②選任された成年後見人が意思能力が失われている相続人の代理人となり、他の相続人との遺産分割協議に参加します。
③遺産分割協議がまとまったら遺産分割協議書を作成し、その内容に応じて遺産の名義変更等の手続きを行います。(手続きに必要な署名等についても成年後見人が代理して行います。)
遺産分割協議において、意思能力が失われている相続人が不利益になってしまう内容の遺産分割は認められません。成年後見人は、意思能力が失われている相続人が不利益にならないように法定相続分を確保するよう他の相続人と協議し調整します。(遺留分確保ではありません。)

(2)成年後見人の選任手続き

成年後見人の選任手続きは家庭裁判所に対して申立を行います。
成年後見等申立てについては、裁判所ホームページを参照願います。
成年後見制度(法定後見)の申立から審判までの期間は事案にもよりますが、標準的なケースであれば2~3ヶ月程度です。
成年後見人には一般的に親族がなることが多いのですが、場合によっては専門家(司法書士、行政書士、弁護士、社会福祉士)等がなることもあります。

(3)利益相反

相続において、被後見人と後見人が相続人同士となって、お互いの利益が相反する(遺産を争う)場合があります。例えば、父が死亡し、認知症になっている母(被後見人)と、母の後見人になっている子が相続人となるようなときが考えられます。このとき、母と子は父の遺産に関して相反関係となります。このような場合は、母の権利を守るために「特別代理人」を選任する必要があります。

(4)成年後見人の任期

成年後見人となった人は遺産分割協議が終われば終了というわけではなく、その後も成年後見人として認知症等である相続人の財産の管理等の仕事をしなければなりません。成年後見人の辞任には、家庭裁判所の許可が必要であり、なおかつ病気などの正当な事由がある場合に限られます。