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遺言書がない場合の相続手続

遺言書がない場合の相続手続

遺言書がない場合、又は遺言書があっても有効でない場合は遺産分割協議が必要です。

(1)遺産分割の方法

相続についてはまず遺言が優先し、遺言がないときまたは遺言があっても有効でないときに民法の定める法定相続分で相続することになります。この時複数の相続人がいる場合は、相続の開始により、共同相続し、共同相続人の所有に属した財産を、各相続人に分配します。この行為を遺産分割といいます。遺産が全部現金、銀行預金、株式などの可分物(分割可能なもの)であれば相続人の相続分に応じて分割することができますが、遺産が現金や可分物だけというような場合はまれで、ほとんどの場合、遺産は土地であったり、家であったり千差万別です。相続分の数字どおりにきれいに都合よく分かれるようになっていません。このため相続人全員で話合い、誰にどのような財産を分配するかを決めることを協議分割といいます。相続人のうち一人でも欠けている場合は無効となります。.なお生前の被相続人との関係を考慮して、相続人間で実質平等を図る制度として「特別寄与者の寄与分」と「特別受益」の規定が適用されます。

(2)遺産分割協議書作成を作成するために必要なもの

①亡くなられた方の除籍謄本、改製原戸籍、戸籍謄本(亡くなられた方の相続人を確認するため・・・遺産分割協議に参加できる人を確認するため)
②亡くなられた方の住民票の除票、戸籍の附票(亡くなられた方の死亡時の住所を確認するため)
③相続人の住民票
④相続人の実印と印鑑証明書
⑤財産の内容がわかる資料(不動産の場合は登記簿謄本・預貯金の場合は預金通帳、残高証明など)

(3)遺産分割の期限

遺産分割自体や相続登記については、特別の法定期限はありません。十分に話し合いをして、相続人全員が納得できる遺産分割の協議をすることが、基本的には大切です。しかし不動産などを被相続人名義のままにしておくと、管理や賃貸、担保設定、固定資産税の納税等の点で障害になります。相続人全員の意見がまとまったときは、早めに遺産分割協議書を作成して相続登記まで済ませておくことが望まれます。

(4)相続人に未成年者や胎児がいる場合

未成年の子の財産に関する法律行為は、親権者が代理してすることになっていますので(民法824条)、夫が亡くなり母一人が親権者であるときは、一般的には母が法定代理人として子を代理することになります。ところが、遺産分割の協議・調停・審判の手続きでは、母が子を代理することはできません。未成年者と親権者の利害が対立する場合(利益相反取引)に該当するので、未成年者の子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に求めて、その特別代理人が子に代わって遺産分割協議に参加することになります。たとえば夫が死亡して、その妻と未成年の子が相続人になるような場合は、妻が子を代理して遺産分割協議をすると、自分に有利な協議をする恐れがあるからです。特別代理人選任の手続きは、子の住所地を管轄する家庭裁判所に、特別代理人選任申立書を提出しておこないます。その際、特別代理人の候補者を申立書に記載することになっています。特別代理人の候補者に関して特別の制限はありません。
特別代理人選任申立書についてはこちらを参照ください。申立人は親権者、後見人、利害関係人です。親権者、子の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票または戸籍附票、遺産分割協議書の案を提出します。申立先は子(被後見人)の住所地の家庭裁判所です。

(5)相続人の一人に知的障害者がいる場合

成年後見制度を利用し、意思能力の程度に応じ、家庭裁判所に「成年後見人」「保佐人」「補助人」等を選任してもらい、分割協議での知的障害者の利益の保護を図ります。
成年後見制度の利用はこちらを参照下さい。

(6)遺産分割協議書の作成

遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印(実印)しておく必要があります。遺産分割協議書の書き方について、特別な決まりはありません。しかし、不動産の相続登記に使う遺産分割協議書については、一定の要件が必要になりますので、相続登記に使う場合も考えて遺産分割協議書を作成するとよいでしょう。

(7)遺産分割協議書作成のポイント

○タイトルとして「遺産分割協議書」と記載する。
○誰がいつ死亡して、その相続人の誰と誰が協議したかを記載する。
○誰がどの財産を取得するのか、相続人の氏名と相続財産の内容を具体的に記載する。
○特に不動産の記載は住所ではなく、登記簿謄本や権利証を確認して土地なら所在と地番を、建物なら所在と家屋番号を記載する。
○住所は住民票又は印鑑証明書の通りに
○協議内容を記載したら、最後に協議の日付を記載し、相続人の住所を書き、自筆で署名し実印を押印する。
○後日発見された遺産は誰に分属するかを明確に
たとえば法定相続の割合で分割するなどと書いておけば、改めて分割協議をやり直す必要がない。
○協議書が数ぺ一ジの場合割印を
○胎児がいる場合は胎児が生まれてから
○相続人が未成年者の場合は、特別代理人を選任する。
○相続人が認知症等の場合は、成年後見制度を利用する。
○相続人の数と同じ通数を作成して、相続人全員が各自一通ずつ原本を保管する。

(8)分割協議がまとまらないとき

遺産分割は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって決めるのが原則です。しかし、遺産が多額に及ぶ場合もあり、容易に話し合いがまとまらないこともあります。この場合には、家庭裁判所における調停、あるいは審判手続きに持ち込まれます。調停は、家庭に関する事件などについて、裁判所が間に入って話し合いで解決を図るものです。調停手続きにおいても話がまとまらないときには、審判により解決が図られます。
※調停又は審判を申し立てる場合は、弁護士の業務となります。