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遺言作成のポイント

遺言作成のポイント

遺言作成のポイント

遺言作成のポイントを以下に記載いたします。

①財産を特定して書くこと

・不動産・・・登記簿の記載のとおりに書くのが無難です。
・預貯金・・・銀行名および支店名、口座の種類、口座番号を明記します。
・株式・・・・銘柄、株数を明記します。

②全ての財産を指定する

遺言者の所有する財産は相続人間でもめないよう、全部の財産の行き先を指定しておくべきです。とくに、贈与が成立していない家族名義預金など洩れのないよう注意が必要です。

③「相続させる」と書く

遺言書を書く際に、法定相続人については「相続させる」、法定相続人でない人の場合には、「遺贈する」と書くのが正しい書き方です。とくに、不動産については「相続させる」と書くことによって次のようなメリットがあります。
1)指定された者が単独で相続登記できます。
2)登記の際の登録免許税が安くすみます。
(「相続」だと評価額の0.4%、「遺贈」なら2%)
※相続人に対し「遺贈する」とした場合であっても相続人であることを証する戸籍謄本等を添付して登記申請を行えば0.4%となります。
3)農地の場合、「遺贈」と異なり知事の許可がいりません。
4)賃借権を承継する場合に所有者の承諾がいりません。
※銀行の預金債権の場合は、相続扱いにすると、被相続人死亡後の払戻に共同相続人全員の同意を要求する銀行もあるので、「遺贈する」と書くこともあるようです。

④遺言執行者を指定しておく

遺言書を書く人は、遺言執行者を指定することや、遺言執行者を決めることを委託することができます(民法1006)。この遺言執行者に指定された人は、相続財産の管理や、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つことになります(民法1012)。したがって、遺言執行者がいる場合には、相続人といえども、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできません(民法1013)。
遺言執行者の指定がないと、預貯金の解約などに銀行所定の書類への相続人全員の押印や遺産分割協議書と、印鑑証明書の提出を求められるのが一般的です。遺言執行者の指定があれば、押印は遺言執行者だけで預貯金の解約などを認めるのが一般的です。ただし、相続人や受遺者が遺言執行者にもなっている場合には、銀行によっては、遺言執行者の押印だけによる預貯金の解約に応じない場合があります。
遺言執行者は、遺言の執行には必ず必要というわけではありませんが、次のような場合は遺言執行者が必要となります。
1)子供の認知(民法781第2項、戸籍法64)
2)相続人の廃除・廃除の取り消し(民法893、民法894)
遺言執行者を遺言で指定する場合は、必ず住所、氏名を明記します。なお、「遺言執行者は、預貯金の解約、払戻、名義書換等の請求をする権限及びその他この遺言執行のために必要な一切の権限を有する。」との条項をを入れておくと、遺言執行を円滑にするために有効です。

⑤借入金の負担者も記載する

遺言書に、住宅ローン等の借入債務を誰が負担するのか明示していないと、相続人らは法定相続分に応じた割合で借入れ債務を負担することにになります。その結果、相続税の債務控除は相続人全員について控除されるため、その分債務負担をする相続人の相続税額が増えることになります。

⑥付言事項で想いを伝える

遺言において、一番気をつけることは、遺言の内容により相続人同士の間で争いが起きることです。そのため、相続人間でしこりが残らないようなものにすべきです。相続人1人が有利になる遺言の場合は、争いになる可能性が高いので注意をしてください。遺言の本来の目的は、争いを避けることにあるはずです。また、財産を残す理由を、心をこめて書いておくと、円満な相続につながります。これは、付言事項という項目で遺族にメッセージを残します。法定相続分で分けるにしても、財産割合に差をつける場合でも、遺言者が財産分けについての考え方を示すことが重要です。例えば、「法定相続分と異なる割合で相続分を指定した理由」や、「長女は介護をしてくれたので財産を多めに相続させる」など、付言事項に書かれていますと、遺族も納得しやすいでしょう。また、「妻よ、今まで本当にありがとう」や、「自分が亡くなった後は家族全員で仲よくやってくれ」といった自分の考え・意思を、書いておくのも良いです。付言事項は、遺言としての法的効力や拘束力はありませんが、遺言者の最終の意思を示すものとして、遺族に対する効果が期待できるからです。また、付言事項に書かれた想いは残された家族に間違いなく届くからです。

(2)法定相続分に反する遺言の作成

遺言が優先されますので、法定相続分の反した遺言も有功です。
しかし、残された遺族のために最低の保証として、遺留分を認めていまので、遺留分までは奪うことはできません。ただし、遺留分に反した遺言も、一応有効です。この場合、遺留分を侵害された相続人は、遺留分を返せという遺留分減殺請求ができます。
遺留分さえ確保した遺言ならば、残りの財産を特定の人等に譲渡することが可能であり、相続後の遺留分減殺請求訴訟は回避できることとなります。

(3)遺留分とは

相続財産は被相続人のものですから、本来、被相続人は自己の財産を自由に処分できます。しかし、これを全く自由に許すと、たとえば赤の他人に全財産を与えるなどという遺言がなされると、被相続人の財産に依存して生活していた家族はたまったものではありません。そこで、相続財産の一定割合について、一定の相続人に確保するために設けられたのが、「遺留分」の制度です。
遺留分の侵害が生ずるのは、生前贈与や遺贈が過大な場合だけに限られません。相続分の指定がなされた場合に共同相続人の間でも遺留分を生じます。

①遺留分権者

遺言書に、住宅ローン等の借入債務を誰が負担するのか明示していないと、相続人らは法定相続分に応じた割合で借入れ債務を負担することにになります。その結果、相続税の債務控除は相続人全員について控除されるため、その分債務負担をする相続人の相続税額が増えることになります。

②遺留分の割合

1)父母など直系尊属のみが相続人である場合
  各自の法定相続分の1/3
2)子孫など直系卑属と配偶者が相続人である場合
  各自の法定相続分の1/2
※遺留分の計算
 法定相続分×遺留分の割合=各相続人の遺留分

計算例
a.子3人が相続する場合 
子(一人当り)  1/3×1/2=1/6
b.配偶者と子(または代襲相続人) 子2人が相続する場合
配偶者      1/2×1/21/4
子(一人当り)  1/2×1/2×1/21/8
c.父母が相続する場合
父          1/2×1/31/6
母         1/2×1/31/6
d.配偶者と母が相続する場合
母         1/2×1/31/6
配偶者     2/3×1/21/3
e.配偶者と兄弟姉妹(または代襲相続人)が相続する場合
配偶者      3/4×1/23/8
兄弟姉妹    遺留分はありません。

④遺留分算定の基礎となる財産の額

=相続人の死亡時の財産(遺贈財産を含む)+生前贈与の価額-債務の価額

⑤各相続人の遺留分額

=遺留分算定の基礎となる財産の額×各相続人の遺留分-特別受益額
※相続財産に加算される「贈与」は相続開始1年以内のものに限られます。ただし、遺留分を侵すことを双方が知って贈与した財産は、1年より前の贈与であっても加算されます。また、相続人に対してなされた贈与で特別受益に該当するものは、相続開始の1年以上前の贈与もすべて加算されます。

(4)遺言の方式・種類

民法には、「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない」と厳格に方式を定めています。その方式を遵守していない遺言は無効です。
遺言の方式には普通方式と特別方式とがあります。
特別の方式は、病気などのために死期の近い者や伝染病のために隔離されている者などに認められた特別な遺言方式です。
一般的には、遺言は普通方式によって行われます(民法967)。普通方式による遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

①自筆証書遺言 遺言の全文と日付を遺言者が自筆で書き、署名押印する遺言方式

長所
○一人で、いつでも簡単に作成できる。
○遺言をしたことを秘密にしておける。
○費用がかからない。
○何回でも書き直すことができる。
短所
○遺言書を紛失したり、死後に発見されないおそれがある。
○第三者によって変造・偽造されるおそれがある。(信憑性が疑われる場合があります。)
○直ぐには有効ではない。執行にあたって検認手続きが必要となる。(相続人全員が裁判所に呼び出されます)
○方式に不備があると無効になるおそれがある。

②公正証書遺言 遺言内容を公証人に口授し、公証人が証書を作成する遺言方式

長所
○公証人が作成してくれるので、方式不備で無効になることはない。
○原本を公証人が保管するので安全。
○文字の書けない人も遺言できる。
○検認手続きが不要。
短所
○遺言書の存在と内容を秘密にしておけない。
○費用を要し、手続が多少面倒である。
○証人二人以上の立会いが必要となる。

③秘密証書遺言 遺言内容を秘密にしつつ公証人の関与を経る遺言方式

長所
○遺言書の内容の秘密を守れる。
○代筆や、ワ-プロ書きも構わない。
短所
○作成に若干の費用と手間がかかる。
○執行にあたって検認手続きが必要となる。
○証人二人以上が必要となる。